<2010年度>
日時:6月24日(金)18時30分~21時00分
場所:東京大学先端研知的財産権大部門丸の内分室
講師:塩澤 一洋 氏 (成蹊大学教授)
テーマ:「デジタル環境における著作権法の存在意義」
【概要】
第2回研究会は成蹊大学の塩澤一洋教授をお招きして開催さ
れた。ご報告は「デジタル環境における著作権法の存在意義」というテーマで、著作物の公表に着目した著作権法制について、塩澤教授の論文(「公表支援のフレームワークとしての著作権法の意義」成蹊法学第68.69合併号、235-264頁)をもとに進められた。
まず、従来の多数説である創作へのインセンティブ論に対する違和感が提起された。すなわち、本来著作権法が存在しない場合でも創作する者は創作するのであり、著作権法が創作のインセンティブを与えているのではない、というのが塩澤教授の主張である。
著作権法の目的は文化的所産の多様性の促進・尊重にある。その目的のためには、創作から「使用・利用」されるまでの間に公表することが不可欠となる。そのことから、「公表支援のフレームワーク」としての著作権法が提唱された。著作物を公表することで、多くの人に著作物が行き渡り、更なる創作につながるのであり、著作権法の目的である文化の発展につながるのである。そこで、国民のすべてが創作者になり、容易に公表することが可能なデジタル環境においては、公表を躊躇させないような公表支援のフレームワークとしての著作権法を検討する必要があるというわけである。
今回のご報告では、著作権法の存在意義が、著作権法の目的や特許法との対比・関連性、憲法との関わりといった視点で説明され、デジタル社会における円滑な著作物流通の促進を考えるうえで示唆に富む内容となった。
塩澤教授の熱のこもったご報告の後に行われた参加者との質疑応答も次第に白熱し、終了予定時刻を大幅に超過しての散会となった。
日時:4月16日(金)18時30分~20時30分
場所:東京大学先端研知的財産権大部門丸の内分室
講師:玉井 克哉 氏 (東京大学教授)
テーマ:「著作権法のリフォーム論について」
【概要】
本年度第1回目の研究会は、デジタル時代における著作権法をめぐる議論をテーマとして行われた。これに関して、最近では情報・ネットワーク関係者だけでなく法律専門家の間からも議論が出てきている状況をふまえ、本研究会の幹事でもある東京大学の玉井克
哉教授が「著作権法の『リフォーム』論議をめぐって」というテーマで話題を提供した。 ここで「リフォーム」と呼んでいるものは、「ネットワーク化の進展にともない、著作権法を改正しよう」という動きのことである。取引費用を縮小して著作物の流通を促進するのが、その目的だといえる。このような議論の代表例として1)「ネット法」、2)フェアユース、3)著作権法制の複線化が挙げられる。そもそも著作権法の基本原理として、19世紀末につくられたベルヌ条約では、著作物完成の瞬間、自動的にさまざまな権利が発生するという「無方式主義」がとられている。これは、「円滑な流通」「積極的な利用」を想定したものではなく、今日の状況には合わなくなってきている。
リフォーム論の一つである「ネット法」は、デジタル・コンテンツの流通促進のために「ネット権」なるものを創出して権利処理を簡素化しようとしたものであるが、法律論としても政策論としても問題点を多く抱えている。また、米国の著作権法などに見られるフェアユース規定を日本に導入しようとするリフォーム論もあるが、権利者の利益が不当に侵害されるおそれのあることなどから、米国に倣うのは当を得ないと考えられる。 今後の有力候補としては、著作権法制の複線化が挙げられる。これは、従来の著作権とネット上の権利を分けて取り扱い、後者をさらに「自由利用型コピライト」と「課金保障型コピライト」に分けて権利処理を行うという構想である。現行の著作権法の大枠を変える必要はなく、権利者の志向にマッチした仕組みを整えて自発的な移行を促すというのが基本的な発想である。著作権法制の複線化が妥当であるとして、立法的対応が何について必要なのか、技術革新によって解決すべき課題は何かなど期待については、今後さらなる議論が必要である。
<2009年度>
日時:2010年3月23日(火)18時30分~20時30分
場所:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「知の循環の在り方 学術情報・サービス連携基盤の動向」
報告:曽根原 登 氏 (国立情報学研究所教授)
第5回研究会は、国立情報学研究所の曽根原登先生を講師にお招きして開催された。
今回のご講演は「知の循環の在り方――学術情報・サービス連携基盤の動向――」というテーマで、①情報爆発からサービス爆発へと移行しつつある次世代インターネットの状況、②学術認証フェデレーションの動向、③学術を例とした「知の循環」の在り方、について話題提供がなされた。
まず俎上にのせられたのが、次世代インターネットにおいて重要となる情報の信頼性とリスクの問題である。ここでは、利便性と信用度に対する不安・不信が混在している電子商取引を例に挙げ、電子商取引サイトの利益と安全性を両立させるような社会システム設計の科学的方法論への挑戦例として電子商取引サイトの‘危うさ’推定システムの実装が紹介された。
ご講演中、最も中心的なテーマとなっていたのが「学術認証フェデレーション」という、定められた規程(ポリシー)を信頼しあうことで相互に認証連携を実現し、学術リソースを利用・提供する機関や組織から構成された連合体の動向である。この学術認証フェデレーションは、サービスが分断されている現況をふまえ、ID空間とサービス空間を融合させることで、同一IDで複数のサービスが利用できるようにすることをめざすものである。ここでは、フェデレーションのシステム構成の実態にふれ、これに参加する主体(サービスを利用する大学、サービスを提供する大学その他、フェデレーション)のメリットと利用例が紹介された。
このフェデレーションの世界における動向を見た場合、日本国内のサービスを展開する必要性のあることが最後の論点として挙げられた。ここで紹介されたのが、国立情報学研究所が提起している「情報サービス連携コンソーシアム(仮称)」である。これは、学術認証フェデレーションの仕組みを活用し、産学連携共同研究開発を促進するようなネットワーク型の環境を構築することを目的とするものであり、今後は技術開発や研究教育のための持続的運用モデル開発、アプリケーションサービス技術やコンテンツ技術の開発とビジネス展開などを検討内容として掲げている。
講演後には、大学関係者、企業関係者などさまざまな立場の参加者から、日本国内の「知の循環」に関する問題点が出され、これに取り組んでいくための技術的・教育的・社会的課題に関する議論が熱く交わされた。
日時: 2010年1月7日(木)18:30~20:30
場所: 東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ: 「グーグル・ブックスの意味するもの」
報告: 林 紘一郎 氏(情報セキュリティ大学院大学学長)
報告趣旨:第4回情報知財研究会は、情報セキュリティ大学院大学の林紘一郎学長を講師にお招きし、約40人が出席して開催された。今回のテーマはグーグル・ブックスであり、出版物のネット配信について、世界的視野からみた現状と問題点、その潮流の中での日本の対応が主な論点であった。出版物のデジタル化は時代の流れから当然のことであるが、そこには著作権侵害の問題、ビジネスという視点からの競争と独占禁止法の問題、検索・結果表示の偏りと出版物の価値との関連性の問題、国際標準化の問題など、さまざまな問題が山積していることが指摘された。
特に題材として大きく取り上げられたのが、2004年にグーグルが発表した「図書館プロジェクト」と、それに対して作家協会が提訴した米国の「ブック検索訴訟」である。この訴訟は、米国政府によって修正和解案が提出され現在も進行中であるが、これに呼応するように世界各地で出版物のデジタル化に関する議論が勃発している。このような情勢をふまえたうえで、情報社会のネットワーキングの喫緊の課題としてグローバル・スタンダードの構築が最重要であるという主張で、この講演はしめくくられた。
講演後のディスカッションでは、参加者の専門や立場が多様であったこともあり、グーグル・ブックスの独占的ビジネスやその影響、出版物の将来的あり方等に関して異なった視点から意見が多数出され、長時間にわたる活発な議論が繰り広げられた。林先生の講演とその後のディスカッションをとおして、今回扱われた出版物のデジタル化は利害関係が複雑に絡み合う情報化社会の問題の代表であり、その解決は大きな社会的要請であるが、そのためにはビジネス、法律、学問、出版等さまざまな立場の専門家が議論していく必要のあることが改めて浮き彫りとなった。
日時:平成21年11月5日(木)18:30~20:30 
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「位置情報技術とプライバシー」
報告:松前 恵環 氏(東京大学大学院情報学環 助教)
報告趣旨:我々は今日、携帯電話などから“GPS”を通じて位置情報を送信し、また、公道において“監視カメラ”で常時撮影され、能動的あるいは受動的に、見知らぬ誰かに位置情報を提供している。このように、個人のプライバシーを取り巻く環境は一変しつつある。しかも、近年の情報技術の発展により、インターネットという仮想空間を介して集積された位置情報が現実空間の他の情報を組み合わされ利用される、といったユビキタスネット社会の到来が現実味を帯びてきた。
このような現状にかんがみ、このたびの研究会においては、“情報”という観点から“プライバシー”論に新たな視座を提供しようと試みられている松前恵環氏から、「位置情報技術とプライバシー」というテーマにつき、日米のプライバシーに関する条文・判例法理を踏まえつつ、犯罪捜査目的のGPS利用など、具体例をまじえながら説明していただいた。
特に、人間の目視による監視によって対象物の位置を①不正確さを残しつつ②断片的に③事後的に把握していたのとは異なり、対象物の位置を①正確に②継続的にかつ③リアルタイムに把握する、というGPSの特性〔追跡(トラッキング)〕を踏まえ、GPSを通じた位置情報については、たとえそれが公的な場所における位置情報であっても、プライバシーの保護に対する合理的な期待が存在しうることに触れられた。そして、第一に、潜在的にセンシティブな位置情報を今後どのように取り扱うべきか、第二に、公共の場におけるプライバシーについてこれまで以上に精緻に検討すべき必要があるのではないか、第三に、位置情報の「有用性」とプライバシー保護とのバランスをとる必要があるのではないか、また、どのようなバランスをとるべきか、という3点を議論する必要がある、と問題提起された。
報告終了後は、研究会ご参加の様々な立場の方々を交えた、活発な質疑応答がなされ、終了予定時刻を超過しての散会となった。
第2回研究会報告
日時:平成21年7月16日(木)18:30~20:30
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「オープン・イノベーションと相互運用性―マイクロソフトの取り組みと課題」
報告:楠 正憲 氏(マイクロソフト㈱ 法務・政策企画統括本部技術標準部部長)
報告趣旨:1970年代からの情報通信技術の変遷について、IP(Internet Protocol)以前の世界と、その後のIPによる事業構造の転換や、IPによるオープン化の恩恵について解説していただくとともに、マイクロソフトの標準化戦略、相互運用性の基盤強化について具体例をまじえながら詳細に説明していただいた。
報告終了後は、活発な質疑応答がなされ、終了予定時刻を一時間ほどオーバーしての散会となった。
第1回研究会報告
日時:平成21年5月27日(水)18:30~20:30
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「NHKオンデマンドをめぐる権利確保の実際と課題」
報告:石井 亮平氏(日本放送協会 著作権・契約部)
報告趣旨:NHKで、著作権に関する契約実務を担当されている石井亮平氏を講師にお招きして、昨年12月に開始されたNHKオンデマンド(NHKが放送した番組のネット配信サービス)のサービス内容について、実際にオンラインで画面を映し出しながら具体的に説明していただいた。さらに、放送番組に関係する権利者の権利内容や、放送番組を活用するための契約(許諾)類型についても詳細に解説していただいた。
報告終了後、参加者からの多くの質問が寄せられ、講師との間で活発な意見交換が行われた。
<2008年度>
第5回研究会報告
日時:平成21年3月11日(木)18:00~20:00
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「情報通信技術の進展と音楽著作権」
報告:菅原 瑞夫氏(社団法人日本音楽著作権協会 常務理事)
報告趣旨: デジタル化・ネットワーク化された音楽著作物の流通動向について説明がなされた後、音楽著作物に係わる権利処理実務の現状について詳細な解説が行われた。
また、著作物の新たな流通に際しての今後の課題として、権利情報の整備・共有化や、許諾・分配システムの整備といった具体策推進の重要性が指摘された。
報告終了後、参加者からの多くの質問が寄せられ、活発な討論が展開された。
第4回研究会報告
第4回情報知財研究会は、東京大学先端科学技術研究センター、
NPO法人知的財産研究推進機構との共催で行われました。
日時:2009年2月6日(金)13:00~18:10
会場:国際文化会館(東京都港区六本木5-11-16)
テーマ:「ICT社会の近未来 ~産官学の対話と協調~」
詳しい情報については、ここをクリックして下さい。
報告趣旨:電子商取引、電子政府、IT医療・IT教育といった、社会における情報媒体が、紙媒体から電子媒体へと急速に移りつつある現在、社会的弱者の増加、著作権問題などといった、過去には想像しえなかった多くの問題が、従来の法整備では追いつかない速さでICT社会をとりまきつつある。今回の研究会では、これらの問題を含めICTがもたらす未来社会に関して、「対話と協調」をテーマとして実施された。産学官を代表する国内の講演者及びパネリストに加え、ICT 社会の構築に急速に取り組んできた海外(エストニア・英国)からも、直接及びオンライン参加形式による意見交換を実施した。
セッション1では、ICT社会に求められる法制度と国家戦略に関して、日本とエストニアを比較しながら、現状報告と求められる解決策に関して意見の交換がなされた。セッション2では、今後社会に求められるICT先端技術に関して、国際的な視点から議論が展開された。
今回の研究会では終始、ICT社会の未来像に関して国内外で多くの共通点が見られ、改めて、ICT社会の発展には国際的な連携及び協調が非常に重要である事が確認された。

第3回研究会報告
日時:平成21年2月5日(木)18:00~20:00
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「コンテンツ産業政策と知財政策の交差点」
報告:境真良氏(早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員准教授)
報告趣旨:コンテンツ産業の構造に関する話(三層構造論)にはじまり、今後の知財政策(主に著作権分野)のあり方とその限界、コンテンツ産業政策の今後の可能性といったテーマについて解説がなされた後、参加者との間で活発なディスカッションが行われた。

日時:平成20年10月1日(水)19:00~21:00
会場:六本木アカデミーヒルズ49・カンファレンスルーム1+2
テーマ:「合衆国最高裁と連邦巡回区控訴裁判所――アメリカ特許法の最近の発
展をめぐって」
報告:玉井克哉氏(東京大学教授)
報告趣旨:アメリカの裁判所組織の現状および裁判官の日常の仕事ぶりといった基本的な解説からはじまり、コンピュータソフトなど情報通信分野に関連する最近のアメリカ特許法の判例が紹介され、さらに特許法の保護範囲の変動についての解説がなされた。
日時:平成20年5月20日(火)16:00~18:00
会場:東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門丸の内分室
テーマ:「デジタルネットワーク社会における著作物の教育利用に関する課題の検討」
報告:井上理穂子(国立情報学研究所)
報告趣旨:著作権法第35条は、特定の要件を満たせば、著作権者に無許諾・無料で他人の著作物を教育利用できる旨を規定する。従来の教室におけるface to faceの紙媒体を利用した教育においては、第35条の規定で問題は生じていなかった。しかし、情報技術の発展により、教材はデジタル化され、教育方法自体もネットワークを介した形態となり、従来の第35条の想定の範囲外の事態が生じ、早急に対応が必要な課題となっている。
本発表では、この課題について具体的に述べ、必要な法改正、政策について検討をした。