11月5日、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールにて、「デジタルコンテンツと情報通信:政策と産業のシナジーの可能性」というテーマのもと第24回国際コミュニケーションフォーラムを開催いたしました。たくさんの方々にご参加いただきました。
ここ数年、前小泉内閣当時に、知財本部が設立され、ポップカルチャーや(マスメディア系の)文化産業・ソフトなIT産業が一挙に注目を集めるようになり、その海外競争力の強さから、新しい経済発展に貢献するものとしてみなされるようになった。その一方で、欧米では、グローバリゼーションの進展に伴い、近代社会が高度化し、文化政策や(ファインアート系の)文化産業が重要視されるようになった。その際、中心概念は<創造性>であり、創造階層・創造産業・創造都市による新しい社会発展が期待されるようになった。これらの2つの潮流は、ここ数年で一つの流れになろうとしており、それを促しかつ基礎付ける要因として、情報通信の重要性が増しつつある。今回は、<デジタルコンテンツ>をキーワードとして、情報通信を媒介的変数にして、この大きな潮流を学際的に把握し、どのような方向に向かい、そして、どういう状態になることが望ましいのか、について明らかにしたい。特に、次のような二つの観点から、アプローチしてみたい。第一に、政策と産業とがどのように取り組みつつあり、どのようにコネクトしようとしているのか、そしてその現状と方向性はどのようなものなのか、そして、第二に、デジタルコンテンツが提供する新しい社会的・文化的リアリティはどのようなものなのか、その深刻な影響はどのようなものなのか、を議論してみたい。
近年、デジタル技術の急速な発展は人間の創造的表現活動に新たな可能 性をもたらし、`デジタルコンテンツ産業`という新しい産業領域を生 み出した。それは富や雇用の創出という経済的な役割に加え、文化の発 展やソフトパワーの増進など他の産業とは区別される役割を果たす。これを受け、先進諸国ではデジタルコンテンツ産業を育成するために様々 な政策が立案・実施されてきている。日本においても2002年小泉 総理の知財立国宣言以降、`コンテンツ立国`というスローガンの下、 積極的な振興政策が講じられてきたことは周知の通りである。一方で、 社会経済システム全体に目を向けると、人間の創造性が持つ社会的・文 化的・経済的価値が急速に高まることによって、クリエイティブ・エコ ノミー(創造経済)という新しい社会経済システムが台頭しつつある。 人間の創造的なポテンシャルを具現化し、価値に転換することが、これ からの国家、都市、企業、そして大学にとっては重要である。第一部では、以上の問題意識に基づき、デジタルコンテンツ産業育成に おける政策的な役割や、台頭するクリエイティブ・ エコノミー に対する国家や都市の戦略の在り方を中心に議論することにする。
第二部は、「コンテンツと社会的・文化的リアリティ」と題し、一部で扱う情報通信とデジタルコンテンツに関わる産業と政策の動向に照応した社会と文化のフェーズでの動向について議論を深めていく。これらは単に、技術、経済、政策などが社会、文化にもたらす新たなリアリティの提示というベクトルだけでない。逆に、ゲームなど日本発のポピュラーカルチャーが国際的な社会文化、市場に与えた影響や、デジタルカルチャーの普及を通じて涵養された創造性の行方、子どもや地域の文化に与えている様々な影響とその広がり、国際的な交流を通じて新たに生まれつつある社会文化の潮流などの相互編成的な事態を、ゲーム、メディア、子ども、国際交流、地域社会など、各現場の専門家のパネルとの討議を通じて見極めていきたい。