会員インタビュー <研究最前線>

 

第7回は、関西支部長 辻正次さん(兵庫県立大学大学院教授)をご紹介します。

辻正次関西支部長

 情報通信学会には、関西地区を中心に活動を行っている関西支部があります。年1回の支部大会の他、情報文化研究会、マルチメディア研究会、情報通信文明史研究会、モバイル・コミュニケーション研究会の研究会が開かれています。今回は関西支部長の辻正次さんにお話を伺いました。

 

―― 関西支部では、秋に行う支部大会と年4回のシンポジウム形式の研究会(情報文化研究会2回、マルチメディア研究会2回)が開催されていますが、いつもとてもタイムリーなテーマですね。どのようなことに配慮しながら内容を決めていらっしゃるのでしょうか?

 地方での開催はどうしても参加者が少なくなりがちです。まず、来てもらわないと意味がありません。一般会員や賛助会員にも参考になる、勉強になるといった観点から関心を持ってもらえる、その時点でホットな話題を中心に取り上げています。会員が聞いてみたいと思うテーマ作りは大切です。
関西では東京ほどシンポジウムの機会がありません。今、この人の話を是非聞いてみたいという方を選び、登壇いただいています。
講演会はすべて支部の運営委員会で事前に議論し、登壇者が何を話されるか、話して欲しいかを整理し、プランを固めていきます。よくある講演会とは一味違う、より専門的で密度の濃い研究会となっていると自負しています。

――関西支部運営委員会も、年に4~5回開催されていますね。

 年5回は開催しています。賛助会員からの運営委員も含めて、皆さん大変熱心にご協力をいただいています。賛助会員からの運営委員を含めて、大学の教員も含めて極めて多忙なので、研究会などの開催に合わせてその前後に委員会を開いています。特に、若い教員の方にも運営委員に加わっていただくことで、継続的な活動が行えるよう配慮しています。

――辻先生はいつもお忙しく、飛び回っていらっしゃいますね(笑)。総務省など政府の審議会などでもご活躍ですが・・

 現在、総務省と厚生労働省に関係しています。総務省では情報通信分野の競争政策、厚生労働省では遠隔医療について意見を求められています。初めて政府の委員をお引き受けしたのは20年ほど前です。当時、インターネットのダイヤルアップ接続の深夜割引というサービスを検討しました。議論して実際の政策として実行され、それが人々の生活に大きな影響を与え、実際に役に立ったという喜びは大きかったです。これが競争政策にかかわる原点です。中でも思い出深いのは、長期増分費用の考え方を紹介したことです。当時米国のFCCや英国OFTELなどでもまだ試行錯誤の段階でしたが、何回もFCCやOFTELを訪問し、それを日本に紹介し、導入の手助けをしました。最近では、固定電話のユニバーサルサービスの制度設計にも携わりました。
私自身経済学者ですから、市場の枠内で普通の人がどれだけ簡便なサービスを利用ができるかを考えています。現実の政策では、経済学的な思考だけでなく、ユーザーの立場や、さらには社会全体の視点で考える必要があります。審議会では、各委員がそれぞれの専門的立場から議論を行いますので、とても参考になります。

――辻先生は遠隔医療や公共政策、情報通信の規制緩和などがご専門と伺っていますが、現在、取り組んでいらっしゃる研究分野についてお聞かせください。辻正次関西支部長2

 大きく2つの研究を行っています。
まずは、FTTH等のブロードバンド普及に関する国際比較です。企業が競争を行い、その結果如何にブロードバンドを普及させていくか、日本でのDSLやFTTHのブロードバンド普及の経験を世界に生かせないかと考えています。国際的な比較研究ですが、各国でデータの取り方が異なり、分析に必要なデータが集まらないので困っています。これの一連の研究はTPRCという世界的に有名な国際コンファレンスで、2年連続で発表しました。これは日本人初の快挙と自負しています。
 今ひとつは、ITを利用した遠隔医療です。これにはもう20年以上も取り組んでいます。医療関係者はメジャーな疾病、例えば癌などの研究には積極的ですが、遠隔医療など地味なものには消極的です。遠隔医療がなぜ日本で普及しないのか、対面診療を求める医師法や遠隔医療には保険の点数がつかないことなど、障害は多々あります。医療現場では20年前から少しも変わっていません。しかし民主党政権になって、政府が情報通信の利活用に積極的になってきて、ようやく前に進み始めました。遠隔医療の経済効果、とくに費用便益分析の研究が世界的に期待されています。私の研究室で行っている遠隔医療の経済評価に関する研究は、世界的に結構評価されていて、内心(とても)うれしいです。
 情報通信の利活用には規制緩和が必要で、何がネックになっているのかを見極め、社会的な仕組みを作り替えていく必要があると思っています。
 電気通信の分野では、理論・実証あるいは現実面でのホットな研究テーマに恵まれ、また研究室の熱心な院生や研究者に囲まれて、喜々として研究に携わっています。時間がいくらあっても足りません。生涯現役の心意気です。これが歳を取らない秘訣です(笑い)。

――今回は関西支部大会の開催直前にお話を伺いました。支部大会は「リアルタイムウェブサービス(twitterとUstream)が拓くこれからの情報社会」と題して行われ、世耕参議院議員による基調講演は「情報社会における政治活動と選挙について」。パネル・ディスカッションはTwitterでおなじみの津田大介氏、佐藤尚之氏を招き、Ustreamで中継をしながらの講演となりました。とても刺激的な大会でした。来年の支部大会も楽しみです。支部大会も研究もはどなたでも参加できます。興味が湧いた方はぜひ関西支部の活動にもご注目ください。

*関西支部運営委員会は平成23年4月1日より関西センター委員会と名称を変更しました。

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