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会員インタビュー —研究最前線−

 

第1回 堀部政男さん(一橋大学名誉教授)に聞く
「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」最終報告書


堀部政男さんを発表者とする情報通信法制・政策研究会【3月17日(月)】のご案内

堀部政男さん顔写真

――昨年暮れの12月6日に「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の最終報告書が発表されましたが、研究会で示された「情報通信法(仮)」の意義を簡単に説明していただけますか?

インターネットを中心とする情報インフラの急速な普及・発展や、情報伝送路の融合が進むことで、従来のメディアごとに形成されてきた縦割り型のルールが現実にそぐわない状況になってきました。「通信」の法体系は1対1の関係を想定したものでしたが、その法体系で規律されるインターネットでも、不特定多数を対象とした「放送」に類似する情報伝達が可能になってきています。今回の報告書では、そのような現状を踏まえ、「縦割り」になっている通信関係法、放送関係法など主要な9つの法律とその他の関係する法律を一本化して、メディアの壁を越えた「コンテンツ(情報の中身)」「伝送インフラ(回線や局の設備など)」「プラットフォーム(前2者の間で検索や決済を行う)」という3つのレイヤー構造からなる情報通信法(仮)の構築を提案しました。

「情報の自由な流通」「ユニバーサルサービスの保障」「情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保」が基本理念となっていますが、現段階ではグランドデザインを提示した段階で、具体的制度設計はこれからです。法技術的な問題を含め検討課題は残っています。

(※「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」最終報告書はこちらから)

――今回の研究会に至った経緯は?

そもそも、通信と放送の「convergence (融合)」については、1980年前後にアメリカで議論され始めました。Convergenceは、原義として「集中、収束、収斂」という意味を持つ言葉ですが、議論している内容からこれを「融合」と訳してみたことがありました。
当時、この議論は情報通信学会の研究会でも行いましたが、日本語の「融合」は、「異なった性質のものがとけて一つになること」という意味で、「適切な表現ではない」という意見もありました。

通信は、電話に代表されるように1対1、放送は1対不特定多数というのが基本認識でしたが、1985年に電気通信事業法が施行され、新しい通信事業が展開されるようになりました。1986年には会員向けに通信回線を利用した電子掲示板のサービスが開始されました。1989年にはダイヤルQ2の利用も始まります。1対1の通信から、1対特定多数、1対不特定多数へと、通信の形態が変わってきました。通信が放送に類似してきたと言えるでしょう。

そして1995年からインターネットの利用が始まり、本格的に通信と放送の融合状態が生まれました。通信のブロードバンド化、IP化の進展、放送のデジタル化の進展がそれを下支えしています。まさに21世紀は通信と放送の融合期なのです。

これはメディアの出現・発展の歴史を踏まえると、第1期のプリントの出現(15世紀~)、第2期のコモンキャリア(通信)の出現(19世紀~)、第3期のブロードキャスティング(放送)の出現(1920年~)に続く、第4期として位置づけられると思います。
社会的に通信と放送の融合が進み、そこに具体的な政策課題として「情報通信法」の話が持ち上がってきたのです。


――報告に対してネットを規制するものという批判がありました。

日本国憲法は、第21条第1項で、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と表現の自由を保障し、第2項で、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と、検閲の禁止、通信の秘密の保障についても、憲法上の人権として規定しています。

最終報告書は、中間取りまとめにおけるよりも表現の自由・通信の秘密を明確に位置づけ、その重要性を強調しています。特にインターネット上の違法・有害情報が問題となっていますが、それを法的に規制すべきであるという意見が強くなってきている状況の中で、これにどう対応するのか検討しなければならない課題は尽きません。

――「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」(平成19年11月26日(月)初会合)の座長も務めてらっしゃいますね。

インターネットは、情報の発信・受信を飛躍的に進展させ、計り知れないメリットをもたらしています。60年前の1948年に国連総会で採択された世界人権宣言は、意見、表現の自由を「国境を越えると否とにかかわりなく、情報・思想を求め、受け、伝える自由を含む」としていて、ネットを利用する時代になってその理念が実現したと思います。

その反面、違法・有害情報も流通しています。表現の自由は最大限保障されなければなりませんが、表現には責任も伴います。発言するルールを作り、それに従うことが必要です。この検討会では、3月頃には中間報告を発表し、秋には最終取りまとめを行う予定です。こうした議論を通じて政府や関係事業者による具体的な対策が取りまとめられることを期待したいと思っています。

2008年2月1日 聞き手 事務局

予告 
【研究会】情報通信法制・政策研究会
【発表者】堀部政男氏(一橋大学名誉教授) テーマ「情報通信法(仮称)のグランドデザインと検討課題」
【日時】3月17日(月)18時00分~
【場所】デジタルハリウッド大学 秋葉原メインキャンパス, 東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7階