会員インタビュー <研究最前線>

 

第8回は、第28回学会大会実行委員長の福冨忠和(専修大学ネットワーク情報学部教授)さんをご紹介します。

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 第28回学会大会は、平成23年7月2日~3日は専修大学生田キャンパスで開催されます。今回は実行委員長の福冨忠和さんに学会大会におけるシンポジウムのご紹介と専門分野のお話を伺いました。

 

―――学会大会では実行委員長を務めていらっしゃいますが、シンポジウム「コンテンツの流通と戦略」の見どころについてお話いただけますか?まず、パネルディスカッション1の「震災と情報通信」ですが、これは急遽組まれたと伺っていますが・・・

福冨 もともとコンテンツをテーマに学会の準備を進めていました。ところが3月11日の東日本大震災の発生により、情報通信が大混乱する事態が起こりました。大都市は1週間ほどである程度回復しましたが、地域によっては1カ月にわたりインターネットも携帯電話もうまく使えないといった事態になりました。ツイッターなどSNSが役立ったという報道もありますが、主に被災地外や被害の少ない地域中心でのことでした。そこで、情報通信学会として震災とITCについて何か提言や検討をはじめなければと考え、今回の事態の分析と未来に向けての方向性を探る機会を設けるため、「震災と情報通信」のテーマでパネルディスカッションを開催することになりました。司会は菅谷実会長にお願いし、パネリストには今回の震災で被災しながらも現地で活躍した方、また被災者を支えるために後方支援をした方をお招きしました。建物に大きな被害はなかったものの、現在も校舎を医療や復興の基地として提供している石巻専修大学の教授で情報教育研究センター長の湊信吾さん、そして「ラジオ石巻」として親しまれ災害後は地域に密着した緊急情報コンテンツを送り続けている石巻コミュニティ放送の放送局長、鈴木孝也さんからは、貴重な災害地からの報告をしていただきます。また多摩大学情報社会研究所主任研究員の会津泉さん、専修大学文学部准教授の山田健太さんにも加わっていただき、震災とITCについて語り合っていただきます。緊急に行うパネルディスカッションゆえに、どんな話題が飛び出すか予測しにくいのですが、生々しい白熱した意見のやり取りが予想できます。

―――パネルディスカッション2の「クール・ジャパンとコンテンツ流通」には様々な分野の方が登壇されます。コンテンツ産業は福冨先生の専門分野でもありますが、今回はどのようなお話になるのでしょうか?

福冨 メディアと通信のインフラ、ICT技術、放送などとともに、コンテンツも情報通信学会の重要な柱のひとつです。今回はコンテンツをめぐるテーマとして、いわゆる「輸入」問題として、「黒船襲来」とまで言われるグーグルやアマゾンなど、海外から参入する新しいビジネスモデルについて、流通、知財、権利処理などについて考えます。世界的なルールが持ち込まれようとしていることに、日本としてはどう対応していくのか、興味深いテーマです。一方で、「輸出」の話題も豊富です。2002年に米国のジャーナリストダグラス・マグレイが、日本のアニメやゲームコンテンツを高く評価して“クール”と表現して以来、「クール・ジャパン」の言葉が広まりました。それに伴って、2005年頃からアニメやゲーム、マンガなどのコンテンツが知的財産、ソフトパワーの「輸出品」として認識されるようになり、かなり活発な動きもみられました。パリで「ジャパンエキスポ」が定着したように、世界各地で日本のコンテンツは多くの若者に支持されています。ところが2008年のリーマンショック以降、コンテンツの輸出も頭打ち傾向にあります。そのような現状を踏まえ、今後のコンテンツの世界戦略に踏み込んだディスカッションをしていただきたいと思います。パネリストは総務省の今川拓郎さん、グーグル執行役員の小尾一介さん、日本貿易振興機構の豊永真美さん、弁護士の牧野二郎さん、アニメキャラクター涼宮ハルヒの米国展開をフィールドワークした『ハルヒin USA』の著書がある経済産業省の三原龍太郎さん、そして司会は、海外における日本のアニメやマンガのコンテンツ流通の実態を研究された一橋大学大学院准教授の松井剛さんです。クール・ジャパン現象は一過性なのか、それとも世界の若者たちに深く浸透して、より広く日本文化を伝える強い「輸出品」となるのか、多彩なパネリストの熱い討論が期待されます。

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―――現在どのような研究をされているのでしょうか? また、今一番興味を持たれているのは、どのようなことでしょうか?

福冨 コンテンツマネージメントとメディア論です。デジタルコンテンツ白書の編集委員長を5年間務めています。1985~1995年に多メディア化が進行したおかげで、1995~2005年はデジタルコンテンツにとって幸せな時代でした。かつてはテレビの下請け的な存在だった制作側が、コンテンツマネージメントをリードできるようになったのです。優れたコンテンツをつくれば、世界に飛び出して勝負できるようになったのです。その最たる成功事例は『ポケットモンスター』で、ゲームをベースにメディアミックス化し、アニメをつくってテレビで放送し、さらに大きく世界に展開して莫大な利益をあげました。その他にも『エヴァンゲリヲン』なども、制作側がリードして利益を上げることができた例です。テレビにはコンテンツ制作側が電波料を払い、主導権を握ったままパッケージで回収して利益を得ました。しかし、2005年以降、ネットの影響やその後のリーマンショックと世界的な不況の影響で、このビジネスモデルが崩れてきました。その結果、コンテンツのパッケージで勝負するというより、別のどのようなビジネスモデルで回収するか、が重要になってきました。映像だけでなく、音楽ではアップルストア、着うたフル、ビットミュージックなどの有料配信サービルがありますし、アマゾンの電子書籍化への取り組み、グーグルのモデルなど、プラットフォームどうしが競合してくる。、これから先どう展開していくのか、極めて興味深い研究課題です。もしかすると新しい巨大マスメディア中心の世界が成立する可能性もあります。

―――専修大学では、学生によるワンセグ放送を行っていると伺いましたが、どのような取り組みをされているのか少しお教えください。

福冨 ホワイトスペースとは地上波放送の電波帯域のうち、他の用途で使える帯域のことですが、地上波アナログテレビが停波し、利用の可能性が広がります。このホワイトスペースの活用方法を提案し、4月にホワイトスペース特区の認可を受けました。提案内容の生田キャンパス・コミュニティ放送「かわさきワンセグ(仮称)」を、早ければ9月から開始したいと考えています。専修大学生田ャンパスに基地局を設けるとともに、近隣の明治大学、日本女子大学、それに多摩区役所とも連携して移動局を設置します。コンテンツは各キャンパスや多摩区周辺のイベント・催事の情報や、講義・学事情報の他、災害発生時には緊急情報も発信します。学生の自主的なコンテンツ制作や配信により、学生の技術や知識の向上が図られるとともに、地域の活性化にも一役買う取り組みになります。

第28回学会大会は、6月27日懇親会等の申込は締切りましたが、シンポジウム及び個人研究発表などは当日参加も可能です。シンポジウムは一般の方にも無料で公開いたしますので、お誘い合わせの上、ぜひ、ご参加ください。

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