情報通信学会のイメージ画像です

会長挨拶
情報通信学会会長
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授  菅谷 実

会長顔写真このたび本学会の会長に選出され、大変に光栄に存じます。
情報通信学会は1983年に立ち上がった学会で、今年は25周年の年にあたります。このようなタイミングでの会長就任ということで、はじめに25年前のことを少し振り返ってみたいと思います。
1983年は、国連、ITU、ユネスコが中心となり世界コミュニケーション年とされた年でもあります。同年12月23日の学会設立記念講演のなかで初代会長永井道雄先生は、本学会設立の経緯を以下のように述べられています。
「こういう世界何々年というのは、その都市のお祭りのようになって終わることが比較的多いと思います。ことコミュニケーションに関しましては、情報社会という言葉が一言で示しておりますように、今日、今後の最も重要な問題の一つになるということに異論がある人は少なくないと思います。そこで、コミュニケーションの問題について広く研究、討議するための学会をつくってはという御意見があちこちから起こりました。」
当時の世界コミュニケーション年の国内委員会委員長であった永井会長は、国内委員会のなかでそのような声を多く聞かれ、学会設立と同時に会長に就任されたわけです。このご挨拶のなかで、本学会の特徴をあらわしているのは「コミュニケーションの問題について広く研究、討議するための学会」という部分です。本学会はコミュニケーションという重要な問題を一つの学問分野からだけではなく幅広い視点から研究、討議をすることを目的として設立され、それが本学会のアイデンティティとも言えるでしょう。今日の学会活動をみても、そのような「幅広さ」は十分に生きていると思います。
しかし、同時にこの25年の間に研究および討議すべき対象である社会のコミュニケーションは大きく変容しています。この25年のコミュニケーション政策の変化、コミュニケーション技術の高度化のスピードは凄まじいものでした。特に、1990年代に入り本格化したインターネットおよび携帯電話の普及の影響は多大で、日々発生する事件や事故の報道にもこの2つのメディアがしばしば登場するのが今日の状況です。
そのような観点からは、本学会で研究すべき、あるいは討議すべきテーマは山積していると言えるでしょう。
この25年間に生じたもう一つの変化は、日本全国の大学にコミュニケーション関連の学部、学科が新設され、それと同時に、類似の学会も数多く設立されたことでしょう。それぞれの学会の設立趣旨は微妙に異なりますが、その多くは「コミュニケーションの問題について広く研究、討議するための学会」という範疇に入る活動でしょう。すなわち、この25年の間に、本学会もまさに学会市場の競争にさらされ、変革を求められているときであるかもしれません。
以下のことは、すでに理事会でも申し上げたことですが、わたしは、本学会の活性化には、以下の2つのことが重要だと思っています。
第一は、学会大会および学会誌の充実です。これは学会活動にとっては基本中の基本でいまさらと思われる方も多くいるかもしれませんが、やはり学会大会で発表をして有益なコメントをえられた、興味ある報告を聞けた、シンポジウムはためになったという満足度の向上には、さらに会員一人一人がアイデアをだし、努力していかなければならないでしょう。学会大会、フォーラムだけではなく、日常の支部活動を含めた研究発表、討議の場も重要です。学会誌も、本年から年4回の発行となりますが、レベルの高い論文、論説などが掲載されることにより、特に若手の研究者からの投稿意欲が高まることに期待したいです。
第二は、国際化への対応です。具体的には、英語による発表や論文投稿の機会を広げ、日本語という言語の枠をこえて、特に、アジアにおいて共有可能なコミュニケーションの課題について討議できる場が、できうるならば常設的に本学会に設けられれば理想的です。近年、大学内での学術研究さらには教育においても、アジアの共通言語としての英語によるコミュニケーションの場が拡大しています。本学会でもそのような国際化への対応に本格的に取り組むべきでしょう。
最後に、わたしの任期中に対処すべき課題として、公益法人改革があります。これは、財団法人である本学会が新たな公益法人制度のなかでどのような選択をすべきか、という公益法人の運営にとってはきわめて重要な課題であり、会員のみなさまのお知恵をお借りしながら模索していくなかで決断をしなければならない課題です。
このことも含めて、さらなる会員一同のみなさまのご協力を切にお願い申し上げます。

 

 

趣意書