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会長挨拶
情報通信学会会長・慶應義塾大学名誉教授 伊藤陽一

会長顔写真

 

 当学会は、1983年10月に、当時、国際連合が提唱した「世界コミュニケーション年」を記念して、「情報及びコミュニケーションに関する研究と意見交換の場」として設立されました。「コミュニケーション」には大きく分けると以下の三つの下位分野があります。(イ)マス・コミュニケーション、(ロ)個人間コミュニケーション、(ハ)テレコミュニケーション(または通信)。当時、マス・コミュニケーションは日本マス・コミュニケーション学会(旧名日本新聞学会)が、個人間コミュニケーションは日本コミュニケーション学会がカバーしていましたが、テレコミュニケーションをカバーしている人文・社会科学系の学会は存在しませんでした。

 1980年以前における日本のテレコミュニケーションは、技術的にはともかく、政策的には極めて単純なものでした。郵便、電信、電話いずれを取っても、ただ規模を拡大し、料金を抑え、あるいは下げ、利便性を高めさえすればいいと考えられていました。テレコミュニケーションが社会、文化、政治、経済をどのように変えるのかといった研究もまだほとんどなされていませんでした。テレコミュニケーションは専ら工学者、技術者の分野だと考えられていたのです。

 しかし、1980年代になると電話の積滞が解消し、ファックス、データ通信、専用回線の販売など多様な電気通信サービスが出現しました。それによって、電気通信分野への民間からの新規参入圧力が高まりました。同時に、急拡大する電気通信産業を公営や独占のままにしておくことに対する疑問が強まり、この分野でも民営化、規制緩和、競争導入政策が取り入れられるようになりました。ここに電気通信政策を政策論として、社会科学的に研究する必要が出てきました。

 さらに、電気通信とコンピュータが融合することによって、電子メール、インターネット、動画のオン・デマンド・サービス等が出現するに至って、日本では1960年代から言われていた「情報社会」が現実的なものとなりました。電子メールとインターネットの網は国境を越えて急拡大し、「グローバル化」が我々にとっての新しい環境になりました。こうして、情報化やグローバル化によって引き起こされるすさまざまな社会的・政治的・文化的・経済的諸問題も当学会の研究対象となったのです。

 現在当学会には次の七つの常設研究会が設けられており、上述のような経過を経て出現した研究課題と取り組んでいます。

1.情報通信法制・政策研究会
2.情報経済研究会
3.情報社会研究会
4.情報文化研究会
5.情報行動研究会
6.国際情報研究会
7.マルチ・メディア研究会

 「情報社会」という1960年代の日本で作られた概念が現在世界的に通用していることに象徴されているように、この分野における日本人の独創性は国際的にも高く評価されています。「情報社会」、「情報化」等の基礎的概念は世界全体に輸出されましたし、「情報流通センサス」のアイディアはアメリカ、韓国、台湾等に輸出され、これらの国々でこの大規模調査の「リメイク版」が作られました。当学会ではこうした過去の実績をさらに発展させるべく、複数の国際学会や国際学術雑誌と連携し、会員による研究を積極的に海外に向けて発信する努力をしています。春の学会大会の他に毎年秋に開催している国際コミュニケーション・フォーラムにはそういう趣旨が込められています。

 

趣意書